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「アメリカの神話」を捉えた演劇界の天才

マルチメディアリソースで調べるルネサンス的万能の天才、サム・シェパードの人生と作品

サム・シェパードの「Buried Child(埋められたこども)」が1979年にピューリッツァー賞を受賞したとき、彼は戯曲を書き始めてから10年近く経っていましたが、この受賞によって奇抜なせりふといつまでも記憶に残る雰囲気、そしてアメリカ人の心情と理性の葛藤の深遠な声の表現者として確固たる地位を確立しました。それ以前の彼の作品は不条理で実験的なもの(The New York Timesの表現によると「炎のような幻覚感と麻薬の陶酔感のような感傷的ロジックを伴う(と感じる)」)が多かったのですが、「Buried Child」のリアリズムは、舞台となる米国中西部に親しみを持ち、家族の機能不全、秘密、男らしさの概念といったテーマに共感を抱く、より幅広い保守的な観客の心をつかみました。

この戯曲は1970年代を舞台にしていますが、時がたっても色あせることがありません。1996年にブロードウェーで上演された「Buried Child」はトニー賞のベストプレイ部門を含む5部門にノミネートされました。最近では、2016年にオフブロードウェーで2カ月にわたって上演され、ルシールローテル賞のベストアクター部門でシェパードの長年の盟友エド・ハリスがノミネートされるなど、2部門でノミネートされました。(2016年3月20日の上演はAlexander StreetのBroadway HDに収録されており、ビデオストリーミングで見ることができます。詳細は下記をご覧下さい。)

シェパードは50本近い戯曲を書いた多作家で、他のアメリカ劇作家の鬼才と肩を並べています。 ProQuest Literature Online (LION)に収録されている彼のバイオグラフィーには次のようにあります。

家族神話の自己破壊的性質に焦点を絞ったという点では、シェパードはユージーン・オニール、テネシー・ウイリアムズ、アーサー・ミラーなどアメリカ戯曲界の巨匠たちと同じグループに分類される。しかし同時に、シェパードは実験的な作家でもあり、猛々しい暴力、ぶっきらぼうな対話、超現実的な対立への傾倒は、ハロルド・ピンターやディビット・マメットとの近さを示している。

1978年に行われた数少ないインタビューの中で、シェパードはThe Washington PostのDon Shirleyと対話し、彼の想像力を駆り立てる源に言及しています。「神話はあらゆるものに一度に訴えかける。特に感情に」と彼は言っています。「私のいう神話とは、謎めいた感覚であって、必ずしも伝統的な決まり事のことではない。私にとって登場人物とは、いくつもの謎を併せ持つものだ」

Shirlyは加えて、「サム・シェパードはアメリカの神話に関する演劇界のナビゲーターだが、彼自身がアメリカ演劇界の神話になりつつある。彼は名声と影響力が高まるにつれ、内省的で内向きな傾向を強めている。ミステリーを秘めた人物であり、おそらく彼はこれを非常に楽しんでいる」と評しています。

シェパードのミステリー性は、ルネサンス時代の教養人があり余るほどの関心と才能と情熱を持ち、余人の理解が及ばなかったのと同様なものでした。シェパードは著名な劇作家としての仕事のほかに、ディレクター、オスカー賞にノミネートされた(The Right Stuff)俳優、そして時にはサイケデリックなロックミュージシャン(ホーリー・モーダル・ラウンダーズのドラマー)、さらに小説、短編、随筆、回想録の著者としても才能を発揮しています。

1963年にイリノイ州からニューヨークに来たシェパードは有名なベーシストであるチャールズ・ミンガスの息子と同居し(戯曲Cowboys #2は彼との関係をベースにしている)、ボブ・ディラン、ジョン・ケイル、後にパンク界のルネサンス的教養人となるパティ・スミスらと交流し、共同制作していました。彼は爆発的なブームのただ中にあったジャズや抽象表現主義、自分達のルールに従って生きるカウンターカルチャーのアウトローたちに囲まれて過ごしたため、その影響が彼の初期の作品の多く出ています。このようにシェパードは、アメリカの地方と都会の両方の奇抜性や矛盾を理解する鋭い感覚を養いました。

少なくともこれまで、シェパードの戯曲が色あせず、今後も新鮮なままであるだろう理由のひとつは、このようなシェパードに関する考察にあります。欠点や欠陥だらけの彼の作品の登場人物に人は共感を覚えます。自分ではそうしようと思わなくとも、登場人物の中に自分自身の中にある何かを見てしまいます。Daily Beastは最近、次のような追悼文を掲載しました。「彼の作品の登場人物である失われた者たちは、全く折り合いの付かない二つの要素、帰属意識という安心感と存在感に伴う満足感とを調和しようとしている。そしてそれは達成不可能なのだ。」

マルチメディアのリソースでサム・シェパードの作品と伝説を知る

Twentieth Century North American Drama
サム・シェパードの戯曲39作品の完全版を収録したコレクションです。ご契約済みのお客様はフルインデックスをご確認いただけます。

Buried Child(ビデオ)
ピューリッツァー賞を受賞したサム・シェパードの戯曲「Buried Child」がニューヨークでの最終公演から20年の時を経て戻ってきました。The New Groupによるリバイバル公演はLisa Matlinがプロデュース、Scott Elliottが演出しています。Dodge(Ed Harris)とHalie(Amy Madigan)はどうにか正気を保って農場を維持しながら、すでに成人した二人のわがまま息子(Rich SommerとPaul Sparks)の面倒を見ています。孫のVince(Nat Wolff)がガールフレンド(Taissa Farmiga)を連れてやって来ますが、だれも孫だとわからず、困惑が広がります。Vinceはこの混乱を理解しようとしますが、彼以外の家族は深く暗い秘密をめぐって揺れ動きます。このアメリカの家族ドラマの極めて詩的で辛辣なおかしさは、私たちが家族や家庭に対して抱く理想像の陳腐な思い違いを愉快に取り除いてくれます。
BroadwayHD CollectionおよびDDAに収録。スクリプトもご確認いただけます。)

True West(オーディオプレイ)
ピューリッツァー賞を受賞したサム・シェパードの古典的喜劇で、疎遠な兄弟AustinとLeeの物語です。シェパードは二人が相手と自分自身、そして家族に折り合いをつけるように仕向けることで、二人の兄弟の現実を対照的に描きます。
Audio Drama: The L.A. Theatre Works Collectionに収録。スクリプトもご確認いただけます。)

その他の脚本:
The Rock Garden(初期に出版された戯曲のひとつ)
Chicago(オビー賞)
Icarus’ Mother(オビー賞)
Red Cross(オビー賞)

出典:
Nightingale, B. (2017, Jul 31). This is how sam shepard revolutionized theater. The Daily Beast.
By, D. S. (1979, Jan 14). Searching for sam shepard. The Washington Post (1974-Current).
Brantley, B. (2016, Feb 17). Review: In shepard’s ‘buried child,’ a father and family dissolve into darkness. New York Times (online).


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