キャバレー:ミュージカル名作の背景を調べる

キャバレーといえばこれまで再演を重ねているミュージカルの傑作です。日本でも先日、長澤まさみさんのサリー役で再演され、その見事な演技で話題となりました。今回のブログでは、ProQuestのコンテンツエディターリーダー、Sandra Hahnがこの『キャバレー』の作品背景の学術的な調べ方をご紹介します。


ミュージカルの舞台裏の人々、場所、創作プロセスを選りすぐりの学際的リソースから調べる

我々は新たな形のミュージカルシアターを探し求めている。陳腐で精彩を欠き、自己模倣的になり果てた劇場とは全く異なるものを。我々は、未来の形を考えるためにのみ過去を振り返っているのだ。(1)
—フレッド・エブ 「キャバレー」作詞家

ボブ・フォッシー監督の映画「キャバレー」は、今から45年前の1972年2月13日に封切られました。

エンターテイメント情報誌Varietyは「きわめて非凡:[中略]洗練されていてかつ猥雑、洗練され官能的、シニカルだが心温まる、心をかき乱すほどに示唆に富む映画」(2)と評しています。

また、映画評論家のロジャー・エバートは「いつまでも記憶に残る絶望の叫び」と評論しています。(3)

まさにバレンタインデーのデートにぴったりの映画といえるでしょう。

有名な振付師でもあったフォッシー監督の「キャバレー」は、ハロルド・プリンスが演出した画期的なシアターミュージカルを元にしています。

プロデューサー兼演出家のプリンスは1965年に彼のチームと「キャバレー」の制作を開始しました。当時のいわゆる「ロジャース&ハマースタイン」スタイルのミュージカルは、すでに行き着くところまで行っていました。一方、観客は1960年代末の社会的・政治的動乱の中で、直観的な歌と踊り以上のものを求めていました。

ナチスが政権を握る前のベルリンの退廃的なキャバレーを舞台にしたこのミュージカルは、そんな観客の要求に応えるものでした。1966年にブロードウェーに「キャバレー」を観に来た観客は、「単に娯楽作品として楽しむだけでなく、一歩進んで考えることを求められた。見終わった後は、娯楽を楽しんだというよりも重苦しい気分で劇場を後にした。」(4)

ミュージカル「キャバレー」はイギリス人作家クリストファー・イシャーウッドの半自伝的小説「さらばベルリン」を原作としています。この小説は1930年代初頭のベルリンでの作者の体験を追想したものです。プリンスと脚本家のジョー・マスタロフは原作の登場人物と場面をほぼそのままの形でミュージカルに取り入れました。しかし、プリンスが最も描きたかったのは、ナチズムと過激な反ユダヤ主義が台頭する中での「ドイツ社会の隠喩としてのキャバレー」(5)でした。「劇中のキャバレー「キットカットクラブ」はプリンスによるミュージカル解説を現実的な場面で具現しており、ジョン・カンダー作曲・フレッド・エブ作詞の楽曲がこれに完璧にマッチしています。ストーリーよりもメッセージを重視した「キャバレー」は、「初の完全コンセプト型ミュージカル」となりました。(6)(7)

「キャバレー」についてもっと知りたいけれど、どこから始めたらよいか分からない場合は?

それならば、プリンスのようにコンセプトから始めてみるのはどうでしょう?

例えば、歴史的背景についてもっと知りたいならば、下記の書籍が最適です。ちなみにこれらはProQuest EBook Centralに収録されています。

  • C. Paul Vincent著  Historical Dictionary of Germany’s Weimar Republic, 1918-1933.
    フォッシーの映画版「キャバレー」でライザ・ミネリの演じる「サリー・ボウルズ」が気軽に会いに行ったマックス・ラインハルト、エミール・ヤニングス、エリッヒ・フォン・シュトロハイムの実像を知ることができます。また、ドイツの映画会社UFAの社名の意味が分かるでしょう。
  • Peter Jelavich著  Studies in Cultural History: Berlin Cabaret.
    「キャバレー」の楽曲は、1920~1930年代にベルリンのキャバレーで実際に行われたショーをどの程度正確に再現しているでしょうか。

「キャバレー」について音楽的アプローチをするのであれば、ProQuestに収録されているAlexander Street Pressに作曲家ジョン・カンダーと作詞家フレッド・エブの次のようなインタビュー動画があります

  • The Legacy Project: John Kander in Conversation with Kirsten Childs
    Landon Van Soest監督、52分。作曲家ジョン・カンダーが「キャバレー」などのミュージカルを作曲する過程について語っています。
  • John Kander and Fred Ebb
    Russ Fortier監督、29分。これはElliot Norton Reviewに含まれる1980年の作品のひとつで、カンダーと作詞家フレッド・エブが「キャバレー」など様々な制作プロジェクトでの2人の協力について語っています。

クリストファー・イシャーウッドの生涯について知りたいならば、同じくAlexander Street Pressの長編ドキュメンタリーなどはどうでしょうか。

  • Chris and Don: A Love Story
    Guido Santi・Tina Mascara監督、2時間13分。この映画はアメリカ人アーティストDon Bachardyとの生涯にわたる関係を描いており、胸を打たれます。

興味の対象がどこにあるにせよ、ProQuestの学際リソースが知的好奇心への扉になることをお約束します。
まさに(フレッド・エブとボブ・フォッシーが書いた)ライザ・ミネリの不朽のセリフのとおり、「お祝いを始めましょう。さあこちらへ。用意はできています(“Start celebrating. Right this way, your table’s waiting.“)」

参考文献
1. Leve, James. “The Divinely Decadent Lives of Cabaret,” Kander and Ebb. New Haven, US: Yale University Press, 2009. ProQuest Ebook Central.
2. Murf. (1972, Feb 16). “Film reviews: Cabaret.” Variety (Archive: 1905-2000), 266, 18.
3.http://www.rogerebert.com/reviews/cabaret-1972
4. Genzlinger, Neil. (2014, 08). “The Age of Aquarius.” Opera News, 79, 32-35. Arts Premium Collection.
5. Leve.
6. Leve, J. (2004). “Open a new window: The Broadway musical in the 1960s.” Popular Music and Society, 27(4), 548-550. Arts Premium Collection.
7. Rinaldi, Nicholas George. (1982). Music as Mediator: A Description of the Process of Concept Development in the Musical, “Cabaret.” (Order No. 8214132, The Ohio State University). ProQuest Dissertations and Theses, 225.


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